隠れた絶景スポット「青ヶ島」をご存知でしょうか? 東京から358km南に位置する離島「青ヶ島」は人口わずか160人ほど。なんと、東京にありながら日本一人口の少ない村です。
この島では、世界的に珍しい二重カルデラや、頭上一面に広がる星空を堪能することができます。ただし、この絶景の島は上陸困難。ヘリは1日1便9席のみで、予約を取るのも一苦労。船も就航率が50%ほどだそう。断崖絶壁に囲まれたこの島は、少しの高波でも着岸が不可に。しかし、ひとたび辿りつきさえすれば、世界的に注目を集めている「絶景」がそこにはあるのです。
今回は、謎の多い島「青ヶ島」の内部をご紹介いたします。
カルデラとは、地下のマグマが大量に流れ出した後、マグマがあった部分の空洞を埋めるために陥没した結果できる凹みのこと。青ヶ島は約3000年前に大規模なマグマ水蒸気爆発が起こり、その後3000年をかけて今の状態になったそうです。
この珍しいカルデラは、島でもっとも高い「大凸部(オオトンブ)」と呼ばれる丘から、一望することができます。青ヶ島は活火山を取り囲むようにできた島。度重なる噴火で外側の山と内側の山(丸山)の間、そして丸山の内部に二重の凹みが形成されています。
梅雨時は島中が霧で覆われることもしばしば。時折、丸山に栓をするように霧がすっぽり覆いかぶさることがあり、立ち込めた霧が山の隙間から海のほうへすーっと流れ出ていくそう。カルデラの中心部から霧が湧き出ているような、その貴重な光景を見た者には幸運が訪れるとも言われています。
島の最北端は、数頭の牛が飼われた牧場があるだけで、周囲には民家もなければ電灯もない道が続いています。このエリアは街明かりがないために、星空がひときわ美しく見えます。その様子は「星空のコロシアム」と呼ばれるほど。
周りは、物音一つしない静かな闇。風が草を撫でる音のみが聴こえます。頭上に降り注ぐ星は、まさに天然のプラネタリウム。これからの季節、天候のいい日であれば写真のような天の川を見ることができるかもしれません。人工的な明かりのない島のなかでみる星は、ひときわ明るく、日常を忘れさせてくれます。
黒潮のまんなかに浮かぶこの不思議な「青ヶ島」には、多くの謎が隠されています。
まずこの島にはいつ人が住み始めたのか、はっきりとした歴史が未だにわかっていないということ。1785年に起こった大噴火以来、約半世紀もの間「無人島」と化したということ。そして男女が同じ島に住むと神の祟りがあると信じられた時代には女人禁制の島、「男ヶ島」と呼ばれていた(『徐福伝説』による)ということ……。
また島内には細かい住所がなく、島内全域が「〒100-1701東京都青ヶ島村無番地」。郵便の配達などは名前のみで判断され届けられるのだそう。ただし同じ苗字の方も多い為に、大体は下の名前で判断するといいます。160人での暮らしでは住所さえも必要ないというのですから、驚かずにはいられません。
丸山の周囲には、島言葉で「ひんぎゃ」と呼ばれる噴気孔がたくさんあり、いまなお煙を発しています。島の人々は火山を畏れるばかりでなく、逞しくもその地熱をつかい、地熱釜とサウナを作ったのです。
石で作った地熱釜。内部に熱気を閉じこめ、その熱でさまざまな食材を蒸すことができます。
地熱釜を試したいと伝えれば、民宿のご主人さんが材料を持たせてくれます。卵、ジャガイモ、魚はいずれも青ヶ島で獲れた新鮮なもの。カゴに入れ40分ほど放置するだけで蒸しあがります。ホカホカに蒸された食材は、かるく塩をふるだけで十分な旨みがあります。 地熱を利用しているので、もちろん24時間無料で利用可能。蒸し立ての食材を夜食に、天体観測を楽しむのも幸せなひとときですね。
青ヶ島で製造された焼酎「青酎」。サツマイモから作った青酎は度数が30度でありながら、まるでスイートポテトのような甘みのあるお酒です。ほとんど本土に流通することがなく、伝説の焼酎と呼ばれています。
そして島には食堂はなく、居酒屋も2軒のみ。その居酒屋で味わう島料理は、絶品です。島で育てたあしたばを揚げた天ぷらや、砂糖でやや甘めにしたしゃりで握る島寿司などをつまみに一杯。島民が集う居酒屋で、島の話を聞くのも楽しい時間です。
東京都に属していながら、日本一人口の少ない青ヶ島。二重カルデラをはじめとする、息を飲むような壮大な自然の中で過ごす時間は、まさに「贅沢」。
確かにアクセスは難しいのですが、その分、無事たどり着いた時の感動はひとしおです。昼は島の探索、夜は居酒屋で青酎と島グルメに舌鼓を打つ。そんな贅沢な休日を過ごしてみてはいかがでしょうか。