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君の名は セリフ_YOUR NAME_你的名字

 

たくさんの星が流れ、その一つが雲を突き抜けて地上に接近する。
下には大きな湖・・・

朝、目が覚めると、なぜか泣いている。

そういうことが、時々ある。

見ていたはずの夢は、いつも思い出せない。

ただ・・・
ただ・・・なにかが消えてしまったという感覚だけが、目覚めてからも長く残る。

ずっと何かを・・・誰かを・・・探している。

そういう気持ちに取り憑かれたのは、たぶんあの日から。

あの日・・・星が降った日。

それはまるで・・・

まるで、夢の景色のように、ただひたすらに

美しい眺めだった。

RADWIMPSの「夢灯籠」が流れ、そしてタイトル。

------------------

携帯のアラームとバイブが鳴っている。

「うーん・・・」

タキくん・・・瀧くん・・瀧くん・・・覚えて、ない?

「名前は・・・三葉!」

「はっ!」

目覚める瀧。
しかし、起きるとそこは見たことのない部屋だった。

ボーっとする瀧は、パジャマの内から胸の谷間が見え・・・

「ん?・・・」

自分の胸に触り、思わず揉んでしまう・・・

「んんー??」

「んー・・・んー」

そこに、妹四葉が襖を開け、「お姉ちゃん、何しとるの?」

「いや、すげー本物っぽいなって思って・・・え?・・・お姉ちゃん?」

自分を指さし

「なに寝ぼけとんの?
 ご・は・ん!
 はよ来ない!」

そう言って襖をピシャリと閉めて行ってしまう。

気だるさが抜けない。

「う~ん・・・」

それでも訳のわからない瀧は、パジャマ代わりのワンピースを脱いで姿見の前に立つ。
そこには、上半身裸の見知らぬ女子の姿が映っていた!

「え?ええええええええっ??」

そう、この時初めての入れ替わりが始まっていたのです。

飛騨の山奥に住む宮水三葉の身体に入り込んでいたのは、東京に住む男子高校生の立花瀧・・・

「おはよう・・・」

「お姉ちゃん、遅い!」

「明日はわたしが作るでね」

しかし、この後階下へ降りた三葉は元の三葉でした。

つまり、、、

朝目覚めて自分の姿が見知らぬ女子であることに愕然とする・・・立花瀧

この間に1日が経過しているのです。

三葉が階下に降りて祖母と妹と朝ご飯を食べます。

繋がった場面ですが、ここが新海監督のトリックです。
この後も、こうした時間軸の切り替わりが何気ないシーンで行われます。
初見だけではなかなかわかりづらいところもあるので、二度見は必須の映画かと思います。

炊飯ジャーを開け、ご飯を盛りながら
「食べ過ぎか・・・ま、いっか」
そう言いながら座ると、

「今日は普通やな」と祖母の一葉

「昨日はヤバかったもんな」妹の四葉にも言われ

「え?ちょっと何?」

この時、「皆さま、おはようございます。町役場から朝のお知らせです。来月から行われる糸守町町長選挙について・・・」町内放送が流れると、祖母の一葉はスピーカーの電源を切ってしまいます。
そして、三葉はテレビを点ける

『1200年に一度という彗星の来訪が、いよいよひと月後に迫っています』

アナウンサーが伝えます。

「いい加減仲直りしないよ?」四葉

「大人の問題!」

そして、四葉と一緒に一緒に三葉は家を出ます。

「「行ってきまーす」」

「しっかり勉強しといでー」と四葉

四葉と別れて高校への道を歩いていると

「あ、みつはー!」

「おはよ。さやちん、てっしー」

後ろから声をかけたのは自転車を漕ぐてっしーこと勅使河原克彦と後ろに乗ったさやちんこと名取早耶香です。

「お前、早く降りろ」てっしー

「いいやん、けち」早耶香

「重いんやさ」

「失礼やな!」

「あんたたち仲いいなぁ」

「「良くないわ!」」

声が揃う。
それを聞いて「ふふふっ」と笑う三葉。

「三葉、今日は髪ちゃんとしとるな」早耶香に言われ、

「え?なに?」

「そうや、ちゃんとおばあちゃんにお祓いしてもらったんか?」てっしーにも言われ、

「お祓い?」

「ありゃあ、絶対狐憑きや!」

「はぁ?」

「あんたはもうなんでもオカルトにしんな!三葉はストレス溜まっとるんよ。なぁ?」

「え、ちょっと、なんの話?」

「何ってお前・・・」

そして、町長選挙演説をする現町長の父宮水俊樹に遭遇します。

「そして、何より集落再生事業の継続、そのための町の財政健全化・・・」

「どうせ今期も宮水さんで決まりやろ」
「相当撒いとるしなぁ、ここだけの話」

そこでクラスメイトに出会います。

「おう、宮水」

「おはよ」

「町長と土建屋はその子供も仲ええなぁ」

すると、父に「三葉!胸張って歩かんか」と言われてしまいます。

「身内にも厳しいなぁ」
「さすが町長や」

そんな町民の言葉が聞こえてくる

「恥ずかし」
「ちょっとかわいそう」

心にもないことを言うクラスメイトたち・・・

「こんなときばっかり・・・」

三葉は胸が詰まります。

「んー??」

授業中、ノートに書かれた、お前は誰だ?の文字に首をひねる三葉

黒板に「誰そ彼」と女性教師が書いていく

「たそ彼、これが黄昏時の語源ね。黄昏時はわかるでしょ?」

「夕方、昼でも夜でもない時間。世界の輪郭がぼやけて、人ならざるものに会うかもしれない時間」

「逢魔が時」と黒板に書かれている。

「もっと古くは「かれたそ時」とか「かはたれ時」とも言ったそうです」

「彼誰そ」
「彼は誰」

と書く。

「しつもーん。それってかたわれ時やないの?」

「かたわれ時?それはこのあたりの方言じゃない?糸守のお年寄りには万葉言葉が残ってるって聞くし」

「ど田舎やもんなー」

この「かたわれ時」がこの映画のキーワードにもなります。

お前は誰だ?

「うーん・・・」

再び謎の書き込みを見る

それに気を取られていると不意に名前を呼ばれます。

「じゃあ、次、宮水さん」

「あ、はい!」

慌てて立ち上がると

「今日は自分の名前覚えてるのね」

と言われ、クラスメイトがどっと沸く。

「ん?」首をかしげる三葉。

休み時間

「覚えとらんの?」早耶香

「うん・・・」

「あんた、だって昨日は自分の机もロッカーも忘れたって言って、髪はぼさぼさで寝ぐせついとったしリボンはしとらんかったし」

「えええええ?うそ、ほんと??」

「なんか、記憶喪失みたいやったよ」

「うーん・・・ずっと変な夢を見とったような気がするんやけど・・・別の人の人生を見とるような・・・よく覚えとらんなぁ・・・」

「わかった!それって前世の記憶や。エヴェレットの多世界解釈に基づく、或いはマルチバーストに無意識に接続して・・・」

「あんたは黙っといて!」

「あー、てっしー、もしかしてあんたががわたしのノートに・・・?」

「え?」

「あ、ううん。なんでもない・・・」

「でも三葉、昨日はマジでちょっと変やったよ?もしかして、どっか体調悪いんやない?」

「うーん、おかしいなぁ。元気やけどなぁ」

「ストレスとかやない?ほら、例の儀式もうすぐやろ」

「あぁ!もう言わんといて―」と頭を抱える三葉。

「もう私この町嫌や~~~狭すぎるし濃すぎるし!さっさと卒業して早く東京行きたいわぁ」

「ほんとに何もないもんなぁこの町・・・電車なんか二時間に一本やし」
「コンビニは9時に閉まるし」
「本屋ないし
 歯医者ないしな」
「その癖スナックは二軒もあるし」
「雇用はないし」
「嫁は来ないし」
「日照時間は短いし」

2人の愚痴を聞いていたてっしーが
「お前らなー!」

「「なによ」」

「そんなことよりカフェにでも寄ってかんか?」

「「えー!!」」
「「カフェ??どこー??」」

目を輝かせる早耶香と三葉

ガタン

自販機から缶コーヒーが落ちて出る

「こんにちは」

見知ったおばさんが声をかける。

「「こんにちは」」

「なにがカフェやさ」早耶香

「この町にそんなんあるか」てっしー

「三葉帰ってまったやろ
 あの子も大変やよね」

「まぁ三葉は主役やからな」

「せやな・・・」

「ねぇ、てっしー?高校卒業したらどうする?」

「なんやさ急に。将来とかの話?」

「うん」

「別に。普通にずっとこの町で暮らしていくんやと思うよ」

三葉の家では組紐を作っていた。

糸を巻く四葉と紐を組む三葉

「あーん、わたしもそっちがいいわ」

「四葉にはまだ早いわ。糸の声を聞いてみない。そやって糸を巻いとるとな、じきに人と糸との間に感情が流れ出すで」祖母一葉の言葉

「糸はしゃべらんもん」

「集中しろってことやよ」と三葉

「わしらの組紐にはな、糸守千年の歴史が刻まれとる。ええか、遡ること二百年前・・」

「始まった」苦笑いの三葉

「ぞうり屋の山崎繭五郎の風呂場から火が出てこのへんはみんな丸焼けになってまった。お宮も古文書もみな焼け、これが俗にいう」

「繭五郎の大火」三葉

「えっ、名前ついとるの?繭五郎さんかわいそう・・・」四葉

「おかげで祭りの意味もわからんくなってまって、残ったのは形だけ。
 せやけど、文字は消えても 伝統は消しちゃいかん。
 それがわしら宮水神社の大切なお役目。
 せやのに、あのバカ息子は・・・
 神職を捨て、家を出た行くだけじゃ飽きたらんと政治とは・・・どもならん」

その頃、勅使河原家では町長と酒を酌み交わすてっしーの父が。

「社長、もう一杯」町長

「おっとっと」

「今回も社長にはお世話になるで」町長

「任しとってください。門入りと坂上あたりの票は間違いなぁですわ」

それを聞く息子のてっしー

「腐敗の匂いがするな」

「何言っとるの」と母

「おい、もう2、3本つけてくれ。克彦、週末は現場手伝え!ハッパ使うでな。勉強や」

「うん」

「返事は!」

「ああ!」

「たまらんな・・・お互い」

部屋に戻ったてっしーが見る先には、宮水神社の灯りが見えます。

その夜
宮水神社では儀式が執り行われていました。

社の舞台で踊る三葉と四葉
左右に上から下へと流れていく様の踊り
その踊りは、実は大きな意味があります・・・

「あれ、四葉ちゃんか。大きゅうなったなぁ」
「二人ともお母さん似のべっぴんさんやわ」

てっしーが抜け出して早耶香と会い、三葉と四葉を見ます。

「よう」てっしー

「よう」早耶香

「世界最古の酒なんやて 
 米を噛んで吐出して放置しとくだけで自然発酵してアルコールになるんやさ」てっしー
 
「口噛み酒。神様嬉しいんかなぁ。あんな酒もらって」

「そら、嬉しいやろ」強い口調のてっしー

三葉と四葉が米を噛み、それを升に吐きだす

その様子を三葉の同級生が見ていた

「おい見てみ。宮水や」
「うわっ、私絶対無理!」
「よく人前でやりよるよな」
「信じられんわ」

その言葉に一瞬ひるむ三葉

そして、升を組紐で結わく。

儀式の後

「お姉ちゃん元気だしないよ~いいにん、学校の人に見られたくらい」

「思春期前のお子様は気楽でええよね」

「あ、そうや!いっそ口噛み酒をたくさん作ってさ、東京行きの資金にしたらどう?」

「あんたって、凄い発想するな・・・」

神社の階段を下りながら

「生写真とメイキング動画つけてさ
『巫女の区著噛み酒』って名前とか付けてさ!きっと売れるわ!」

思い浮かべる三葉
思わず赤くなり

「だめ!酒税法違反!」

「え・・・そういう問題なの?」と四葉

階段を駆け下り、鳥居の前に立つと大声で叫ぶ。

「もうこんな町いややー!こんな人生いややー!来世は東京のイケメン男子にしてくださーーーい!!」

こだまする三葉の叫び

「はぁ・・・あほな人やなぁ」四葉が呆れる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

スマホのバイブレーションで目が覚めた三葉はスマホを探すうちベッドから落ちてしまいます。

「うううん・・・ううううん・・・痛っ!」

そして、目の前には見知らぬ部屋。
そして、男子の制服が。

「どこ?・・・ここ」

そして身体の違和感を感じた瀧は、のどぼとけを触り

「ん?」

自らの胸に手をあて、

「んんっ?」そこに膨らみがないのと同時に

「なんやある・・・」と股間に目を向け・・・触り、「ひゃぁああ!!」と両手を上げ、叫んでしまいます。

そう、瀧の身体には三葉が入り込んでいたのです。

洗面所の鏡を見て、そこに映る見知らぬ男子・・・呆然とします。
頬には絆創膏。

「イタッ!」

触れると痛みが。

「おーい、瀧、起きてるか?」と声。

ビクッとする三葉。

制服を着て食卓に行くと、父親に「今日はメシ当番だったろ?寝坊しやがって」

と言われ、「すいません」と謝ってしまいます。

「ん?俺は先に出るからな。味噌汁飲んじゃってくれ。遅刻でも学校はちゃんと行けよ。じゃあな」

父親はそう言って先に出て行ってしまいます。

「行ってらっしゃい」

変な夢・・・

その時、スマホがピロリンと鳴り、

「ひゃあ!」驚く三葉

『お前、まだ家か?走って来い!』

メールには「ツカサ」の文字

「ええー・・・なになにぃ?ツカサ・・・?誰ぇ・・・」

「あ・・・あぁ・・・トイレ行きたい・・・」

トイレに行く三葉。
用を済ますと大きくため息をつきます。

そして、学校へ行くために出かけます。
マンションのドアを閉め、「何~この夢・・・リアルすぎ」と顔を赤らめる三葉。

そして、目の前に、朝日に照らされたビル群がひしめく景色を見た三葉は都会の景色に目を奪われてしまいます。
思わず髪の毛を触る。

そして、スマホで地図を確かめ、人ごみの中を歩み始めます。

「わあぁ・・・東京やぁーー!」とテンションが上がります。

知らない東京でなんとか学校へ着いたのは昼休み。
そっと、教室を覗き込む三葉に、後ろから友人の司に声をかけられます。

「たーき!」

「ひゃぁあああ!」

「まさか昼からとはね。メシ行こうぜ。」

「えぇー・・・」

「メール無視しやがって」

「ツカサ・・・くん?」

「クン付かよ。反省の表明?」

と揶揄されてしまいます。

屋上で友人高木、司と3人で食事をすることになりますが、遅刻したことに

「迷った??」

「うん・・・」

「お前さぁ、どうやったら通学で道を迷えんだよ」

などと高木には突っ込まれ、

「ああ・・・えっと・・・わたし・・・」と言うと

「「わたし?」」

と言われ、

「わたくし?」

「「んん?」」

「ぼく?」

「「はぁ?」」

「オレ?」と指さすと

うんうんと頷く友人2人。

「オレ、嬉しかったんやよ。なんか毎日がお祭りみたい。東京って」

そう言うと「なんか訛ってないか?」と言われ、

「えっ?」

「瀧、弁当は?」と司に言われて、「えぇっ!?」と驚きます。

「まったく・・・」

「寝ぼけてんのか?」高木

「なんかあるか?」司

「たまごコロッケサンドにしようぜ」高木

自分たちの弁当からあり合わせで即席のサンドイッチを作り渡します。

「あ、ありがとう」

高木は「にひぃい」と笑う。

「放課後、カフェ行かね?」高木

「ああ、例の。いいね。瀧は?」司

「え?えええっ!?カフェえええ~!!?」

目がキラキラの三葉。

犬が2匹こちらを見つめて尻尾を振っている。
三葉は夢心地でそれを見る。

「天井の木組みがいいね」高木

「ああ、手がかかってんなぁ。たーき、決まった?」司

三葉はメニューのパンケーキの値段に驚いてしまう。

「ああ・・・ええっ!?こ、このパンケーキ代で、オレ1ヶ月は暮らせる・・・」

「いつの時代の人だよ、お前は」司

そして、カラフルなパンケーキを写メり食べながら

「うーん・・・まいっか。夢やし」

「「ん?」」

「はあーいい夢~」

「はぁ?」

そう思っているとバイブが鳴りメールが

「えぇっ?どうしよう、俺バイト遅刻だって!」

「お前のシフト今日か」

「早く行ったら?」

「あ、うん。あ・・・あのぉ~、オレのバイト先ってどこやっけ?」

「「はあぁ??」」

そしてイタリアンの店で初のバイト。

「6番、7番、10番様オーダー待ちです」

「12番テーブル!瀧!」

「あ、はい!」

「お待たせいたしました」

「えっと・・・ズッキーニとトマトのサラダと・・・」

「頼んでませんけど」
「えっ!?」

「トリュフは品切れだって言ったろ!」

「瀧!声が小さい!」

「瀧ーーー!!」

あまりの忙しさ、そして怒られ

ああああぁ、この夢いつ覚めるんやさ~~~

混雑も落ち着いたころ、

「ちょっとお兄さん」

「はい」

「ピザにさ、楊枝が入ってるんだけど。食っちゃったら危ないよね~。俺気づいたからよかったけどさ、どうすんの?」

「あの・・・でも、イタリアンの厨房で楊枝が入るなんてことは・・」

「なんだと!?」

テーブルを蹴り上げ、語気を荒げる客

「お客さま、どうかなさいましたか?」

不意に女性が現れ、その女性が『ここはいいから』と言って三葉を下がらせます。
バイト仲間が三葉を奥へ引き入れ

「瀧!お前今日はおかしいぞ!」

すると、さっきの女性が

「お代は結構ですので」

「そう?」

「お怪我はありませんでしたか?」

そう言いながら客はカッターを手にします。
しかし、その女性も気づきません。

そして閉店後

掃除機をかけながら

「あの・・・奥寺さん」

「先輩、だろ?」と同僚に頭を小突かれ

「奥寺先輩・・・さっきは」

「今日は災難だったね。あいつら絶対言いがかりだよ。マニュアル通りタダにしてやったけどさ」

その時、別のバイト仲間が

「奥寺さん、そのスカート!」

「きゃ!!」

「大丈夫ですか?」

「おい、どうした?」

「やだっ・・・切られてるみたい。あいつら・・・」

「ひどいな・・・」

「顔とか覚えてますか?」

奥寺のスカートが切られていたのです。

それを見た三葉は、

「先輩、ちょっと」

奥寺を連れて奥の控室に連れて行きます。

「先輩、スカート脱いでください」

「ええっ!?」

「え!む、むこう向いてますから」

「えぇー?」

怪しむ奥寺を尻目に、奥寺のスカートを縫い、刺繍を施して仕上げます。

「すぐに済みますから・・・できました」

「瀧くんすごい!!前よりかわいい!」

三葉はにこっとします。

「今日は助けていただいてありがとうございました」

「本当はさ、今日心配だったんだ。瀧くん弱いくせにケンカっぱやいからさ。今日のキミの方がいいよ」

そう言って自分の頬を指さします。

あ・・・

「ありがとう。女子力高いんだね♪瀧くんって」

その帰り
電車の時刻表を確認しつつ窓に映る顔を見ながら

よくできた夢やなぁ・・・我ながら

そして、家に帰ってスマホを見ていると・・

「あ、この子日記つけとる・・・マメやなぁ」

司たちの写真や料理の写真をめくりながら

いいなぁ 東京生活

その中に奥寺の後ろ姿の写真を見つけ、

あ、あの人や!

何枚か隠し撮りのように撮られた奥寺先輩の写真

片想い、かな

ふふっと笑うと
日記を書いていく。

『・・・今日は奥寺先輩と駅まで一緒に帰りました。ぜんぶ私の女子力のおかげ!」

ふと、ノートに書かれていた言葉を思い出す

お前は誰だ?

そして、手のひらに『みつは』とペンで書く

あくびが出る

ふあぁ

・・・・・・・・・・・・・

翌朝アラームのバイブ音で目覚めた瀧

ふと、自分の手のひらを見て「みつは」と書かれているのを見て

「なんだ、これ??」

そして、着替えもせず制服のままで寝ていたことを知り、さらにスマホには覚えのない日記がつらつらと記されていた。

『・・・今日は奥寺先輩と駅まで一緒に帰りました。ぜんぶわたしの女子力のおかげ♡』

「な、なんだこれ!?」

そして、学校で

「おい、瀧!今日は弁当持ってきたか?」

「ああ」

「迷子にならなかっただろうな」

「え?なんだそりゃ」

「ん?」

「いや、なんでもない」

「今日もカフェ行かね?」

「あーわりぃ。俺今日これからバイト」

「行き先は分かるのか?」

「はあ?・・・あ、司もしかしてお前か?俺の携帯勝手に・・・」

「あ?」

「ああ・・・やっぱいいや。じゃあな」

瀧が帰ると、

「あいつ、今日は普通だったな」司

「うん」高木

「昨日はなんか・・かわいかった」司

「えぇっ?」高木

そしてバイト先では

バイト仲間から詰め寄られる

「な、なんすか?」

「てめっ瀧、抜け駆けしやがって!」

「昨日お前たち一緒に帰っただろ!」

あの日記が蘇ります。

「え?ええ?まさかマジで!?奥寺先輩と!?」

「「「あれからどうなった!?」」」

「あの・・・よく覚えてないっすよ、俺」

「ふざけんなよこら!」

「奥寺、入りまーす!おっつかれさま~」

奥寺ミキが入ってくる。

「「「「ちわっす」」」」

「あ、今日もよろしくね。ね、たーきくん♡」

とウインク

「おい、瀧ーーーー!!」

詰め寄る仲間

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ううーん」

目が覚めて大きく伸びをする三葉

腕には、みつは?お前は誰だ?の文字

「お姉ちゃん、今日はおっぱい触っとらんね。
 ご・は・ん!
 はよ来ない」

「おっぱい??」

顔を赤らめ思わず自分の体を抱きしめます。

登校して三葉が教室に入るとみなが一斉に三葉を見る。

「おはよー」

「「「おお・・・」」」

「な、なんか視線を感じるんやけど・・・」

席に着く三葉は早耶香に言う。

「うん、昨日のアレは目立ったもんなぁ」

「は?」

前の日の美術の授業中

「ポスター見た?町長選挙の」

「誰が上がっても同じやね」

「助成金をどう分配するだけやもんな」

「そのおかげで助かってる人もおるしな」

「あれってあたしの事だよね?」

「うん・・・」

「ちょっ、三葉!」早耶香

座ったまま、机をガンっと蹴とばす瀧

クラスのみんながハッとして瀧を見つめる。
瀧の目は挑戦的に睨みつける。

「な・・・な、なによ、それ?」

ノートをめくると、次々に書き込みがあり・・・

「はあぁ・・・?これってもしかして・・・」

瀧はスマホの書き込みを見て、

「はぁああ?これってもしかして本当に・・・」

「私、夢の中であの男の子と・・・」

「俺は、夢の中であの女と・・・」

「「入れ替わってるぅ!?」」

RADWIMPSの「前前前世」が流れます。
この後の話の展開とテンポがまさにぴったりとハマっています。

なにが起きているのか、だんだんわかってきた。瀧くんは東京に住む同い年の高校生で・・・

ど田舎暮らしの三葉との入れ替わりは不定期で、週に2、3度、不意に訪れる。トリガーは眠ること。原因は不明

入れ替わっていた時の記憶は、目覚めるとだんだん不鮮明になってしまう。

それでも、俺たちは確かに入れ替わっている。周囲の反応がそれを証明している。だから・・・

だから、わたし達はお互いの生活を守るためルールを決めた。
入れ替わった時の注意点や守るべき禁止事項

それから入れ替わった日の出来事を携帯に残すこと

この謎現象をとにかくも乗り越えるために、協力し合うこと。
それなのに・・・

それなのに・・・

あの女は・・・!!
あの男は・・・!!

バスケットボールでジャンプする三葉の胸が揺れ、見ている男子たちが驚きます。
片足を上げ、膝を横にして座る三葉。

男子の視線、スカート注意!人生の基本でしょ!?

人の金で無駄遣いすんな!

食べてるのはキミの体!わたしだってバイトしてるしぃ

組紐とかこれ無理だろ!

あなたバイト入れすぎ!

お前の無駄遣いのせいだろ!

今日は帰り道に奥寺先輩とお茶。キミたちの仲は順調だよ!

てめぇ三葉!俺の人間関係変えるなよ!

女子からラブレターを貰う瀧。
男子からも・・・

ちょっと瀧くん。なんで女子に告白されてんの!?

お前、俺に人生預けた方がモテんじゃね?

うぬぼれんといてよね。彼女いないくせに!

お前だっていねぇじゃねぇか!

私は・・・
俺は・・・

いないんじゃなくて作らないの!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ある日。
瀧は三葉の姿で目覚めます。
しかし、この入れ替えは必然だったのです。

あいつに悪いか・・・

そう言いながらもつい胸を揉んでしまう瀧(笑)

「お姉ちゃん、ホント自分のおっぱい好きやな」

「行くよ!はよ準備しい!」

制服に着替えた瀧は階下に降りて茶の間に入ります。

「お姉ちゃん、なんで制服着とるの?」

「え?」

四葉が言います。
「なんでうちのご神体はこんなに遠いの?」

「繭五郎のせいでわしにもわからん」

「繭五郎って?」

「え?有名やよ」

一葉、三葉、四葉の3人はこの日宮水神社のご神体に向かいます。

道が険しくなる途中、瀧は祖母に駆け寄り背負います。
しかし、体は三葉。一瞬よろけます。

「お姉ちゃん・・・」

それでもなんとか祖母をおぶさりながら道を進む。
瀧の額には大粒の汗。

「三葉、四葉、ムスビって知っとるか?」

瀧に背負われた一葉が話します。

「土地の氏神様を古い言葉でムスビって呼ぶんやさ。
 この言葉には深ーい意味がある。
 糸を繋げることもムスビ。
 人を繋げることもムスビ。
 時間が流れることもムスビ。
 全部神様の力や。わしらの作る組紐も神様の技、時間の流れそのものをあらわしとる
 よりあつまって形を作り捻じれて絡まって時には戻って途切れてまたつながって」

途中で三葉と四葉は茶を飲みます。

「ありがとう」

「次わたしも」

「うん」

「それもムスビ」

あ・・・

「水でも米でも酒でも
 人の体に入ったもんが魂と結びつくことも
 またムスビ
 だから今日のご奉納は神様と人間を繋ぐための
 大切なしきたりなんやよ」

そうして、辿りついた巨大なカルデラの中央に巨木と大岩のご神体がある。

「あれが・・・宮水神社のご神体・・・」

そのご神体のある地との境には小川が流れている。

「ここから先は隠り世。あの世のことやわ」

「此岸に戻るにはあんたらの一等大切なもんを引き換えにせにゃいかんよ
 
 口噛み酒やさ
 ご神体にお供えするんやさ
 それはあんたらの半分やからなぁ」

三葉の半分・・・

「もうかたわれ時やなぁ」

四葉の言葉を聞き返す瀧
「かたわれ時?」

わあぁ・・・

夕陽に染まる糸守湖
その眺めがあまりに美しくて・・・

「あ、そうや。彗星見えるかなぁ」と四葉

「彗星?」

「おや?三葉。
 あんた、今夢を見とるな」

一葉の言葉が瀧を捉えます。

ハッと目覚める瀧。
体が熱い。
鼓動が激しい。
そして・・・

涙・・・なんで・・・

その時スマホのバイブが鳴ります。

それは奥寺ミキからで

「もうすぐ着くよー
 今日はよろしくね❤」

奥寺先輩!?なんのこと?・・・はっ!まさか、また三葉が・・・?

慌ててメモを開く瀧

デートぉ!?

『明日は奥寺先輩と東京デート!
 駅前10時半待ち合わせ

のはずやったのになぁ

三葉のまま目覚めた三葉
今日だけは入れ替わりを望んでいたのに。

瀧は走って息も切れ切れの中四ツ谷の駅前に着きます。

「たーきくん!ごめん、待った?」ミキが言います。

その大人びた姿に見とれる瀧

「はい・・・いえ、今来たとこす」

「よかった。じゃあいこっか」

いいなぁ
今頃二人は一緒かぁ

鏡台で髪を結いながらため息が出る・・・

あれ?
わたしなんで・・・

頬を伝う涙・・・

『わたしが行きたいデートだけど
 もし不本意にも瀧くんになっちゃったとしたら
 ありがたく楽しんでくること!

三葉が入れ替わっている時は女子同士(心は)ということもあってミキとは仲良くなっていくが、瀧自身はデートでどう話をしていいかもわからず・・・

トイレに駆け込んだ瀧

「会話がぜんっぜん続かねぇ・・・」

『とは言え、君はデートなんてしたことないでしょうから
 だから以下、奥手の君を助けるための厳選リンク集

「マジ?助かる」

しかし、三葉が用意していたリンク集があまりなもので・・・

『ダメな君にも彼女ができる』
『コミュ障害のワイが恋人をゲットした件』
『もうウザいと言われない、愛されメール特集』

「バカにしやがって・・・」

そんな中、立ち寄った美術館の写真展に心を惹かれます。
『郷愁』と題されたそこに、飛騨地方の写真が多数飾られていて・・・
神社や学校、そして糸守湖を俯瞰で写した写真に惹かれ、見つめる。

この景色・・・どこかで・・・

ミキには「瀧くんてさ、今日は別人みたいだね」と言われてしまい、「あの先輩、腹減りませんか?晩メシでも」そういう瀧に、ミキは「今日は解散しようか」と言われてしまいます。

「あ・・・はい」

「瀧くんって・・・違ってたらごめんね?」

「はい」

「キミは昔、わたしのことがちょっと好きだったでしょ。」

「ええっ!!」

「そして今は、別の好きな子がいるでしょ?」

「ええええ!!いませんよ・・・」

「ほんと?」

「いないっす。全然違います・・・」

そう言いながら顔を背けてしまう。

「ほんとかなぁ・・・」

顔を覗き込むミキ

「ま、いいや。今日はありがと。また、バイトでね」

結局夕食もしないままデートは終わりになります。

ふと、瀧は三葉に電話をかけます。


ここも一見つながっている場面ですが、時間軸が違います。

三葉の電話に着信があります。
しかし、それは同級生のてっしーでした。

「な~んだ、てっしーか?ううん、なんとなくサボってまっただけ・・・元気やよ」

「今日夜は出てこれるんか?お祭りやろ?それに」

「え?お祭り?うーん・・・そっか・・・
彗星・・・今日が一番明るく見えるんやっけ。わかった。あとでね」

「あんたさぁ、三葉の浴衣期待しとるやろ」と早耶香

「しとらんわ。てか考えもせんかったわ」てっしー

「ふーん?」

「ああ・・・なんかあいつ声暗かったぜ?」

「あんたの電話が嫌やったんやろ?」

「お前なぁ!」

「お待たせ」

三葉が待ち合わせの場所に着くと、その姿に2人とも驚きます。

「「えっ!?」」

「ちょっと・・・どうしたの?三葉!」

「おまっ・・・か・・・か・・・」

「・・・髪がぁ!」

バッサリと髪を切った三葉

「やっぱ・・・変・・・かな?」

髪を触りながら照れる。

驚く2人と共にお祭りに向かう。

三葉の後ろから少し離れて歩く早耶香と勅使河原は・・・

「やっぱ男関係なんかな。失恋とか」

「男子ってすぐ恋愛に結びつけるなぁ。なんとなく切ったって言っとったに」

「なんとなくあんなん切らんやろ!」

その途中で、三葉は彗星が大きく光を放つ空を見上げて・・・

「なぁなぁ、見えるよ!」

「すんげー」

「わぁ!」

「あっ・・・」

三葉の瞳に一際大きく彗星が映り、彗星が割れて・・・

 

 

 

ガシャーン!
金属音と共に暗転-

そこでシーンは再び瀧に戻り、

”おかけになった電話は電波の届かない・・・”

三葉にかけた電話は繋がらず
前日の日記の最後には三葉の言葉が

『デートが終わるころにはちょうど空に彗星が見えるね
明日がたのしみ❤どっちになってもがんばろうね!』

空を見上げる瀧

何言ってんだ?こいつ・・・

まぁ、いっか
散々だったデートの結果は次に入れ替わった時に話せばいい
そう思った

でも、なぜかもう二度と
俺と三葉との入れ替わりは起きなかった。

-------------------

ここで時間軸の1つの終わります。
この日、瀧が瀧で目覚めたこと、三葉が三葉で目覚めたことは必然でした。

ひたすらに糸守湖の景色を描いていく。
何かに憑りつかれたように・・・
汗が滴る。
水を飲み、なおも鉛筆を走らせる。

そして、朝。
壁に貼られた自分が描いてきた糸守のスケッチ画を何枚か剥がしてリュックに入れ、瀧は旅に出ます。

入れ替えが途切れ、電話は通じず、メールも届かず・・・

だから俺は三葉に会いに行くことにした。
あいつに会ってみたかった。

東京駅に着くと、なぜか友人の司と奥寺ミキの姿があった。

「な、なんで・・・こんなとこにいるんすか?」

「司くんに聞いて来ちゃった♪」

「司、てめー、俺が頼んだのは親へのアリバイとバイトのシフトだろ!?」

「バイトは高木に頼んだ」

「まかせとけ!でも、メシおごれよ?」と高木

「どいつもこいつも・・・」

「お前が心配で来たんだよ」

「はぁ?」

「放っておけないだろ?美人局とか出てきたらどうするんだ?」

「ツツモタセ?」

「瀧くん、メル友に会いに行くんだって?」
ポッキーを片手にミキが言います。

「いや、メル友っていうか、それは方便で」

「ぶっちゃけ出会い系かと」司

「ちげーよ!」

「お前、最近やけに危なっかしいからな。離れて見ててやる」

「俺は小学生か!」

不思議な3人は、旅を続けます。

「はぁ?詳しい場所はわからない?
手掛かりは町の風景だけ?」

「はい・・・」

「その子と連絡も取れない?なんなのよそれ?」

「とんでもない幹事だな」

「幹事じゃねえ!」

瀧にわかっているのは、あの美術館で見た風景画から、岐阜の飛騨地方であるということだけ。後は必死になって書き溜めたスケッチ画を見せながら聞き込みを続けるも手掛かりは得られず・・・

「邪魔だな・・・」

はしゃぐ司とミキを横目にそう呟くしかない瀧。

「やっぱ無理かぁ・・・」

バス停で思わず瀧はそう顔を落とします。

「「えええええ?」」

「私たちの努力はどうなるのよ!」

「はぁ・・・なんにもやってないじゃん」

諦めかけてラーメン屋に入ります。

「高山ラーメンひとつと」ミキ

「高山ラーメンひとつと」司

「じゃあ、高山ラーメンひとつ」

「はい。ラーメン三丁!」

「はいよー」

「今日中に東京に戻れるかな?」

「あぁ、ギリギリかもな。調べるか」

「サンキュ」

「瀧くん、それでいいの?」

「いや、なんか全然見当違いのことをしてるような気がしてきて・・・」

自分がここまで来た意味が無意味だったのではないかと言う思いで、持参したスケッチ画を取り出して眺めます。
高校の校庭から糸守湖を見下ろした風景・・・

その時、ラーメン屋のおかみさんがその絵を見て「おや、お兄ちゃん。それ糸守やろ?よう描けとるわ。なぁ、あんた」と言い、店主の旦那に同意を求めます。

「ああ、糸守やな。懐かしいな」

店主も絵を見て言います。

「うちの人、糸守出身やで」

ハッ!

「イトモリ・・・そうだ、糸守町!この近くですよね!?」瀧は叫びます。

「あんた・・・」おかみさん

「糸守ってのは・・・」店主

司とミキも気づきます。

「糸守・・・はっ、まさか」司

「もしかして、あの彗星の!?」ミキ

「え・・・?」

そして、着いたところは・・・

そこは三葉が通っていた高校の校庭から糸守湖を見下ろす位置でした。
そこで、瀧が見たものは、信じられない光景でした。

走り寄る瀧

『災害対策本基本法によりここから先立ち入り禁止』の立て札

そして、鉄のバリケードが張り巡らされていて・・・

糸守湖と繋がるようにして出来た大きな湖
破壊された町の残骸
ひしゃげた電車

ミキが言います。
「・・・ねぇ、本当にこの場所なの?」

司が答える。
「まさか・・・だから瀧の勘違いっすよ!」

瀧は叫ぶ。

「違う!!間違いない・・・この校庭、周りの山、この高校だってはっきり覚えてる!!」

「そんなわけないだろ!?3年前に何百人も死んだあの災害、瀧だって覚えてるだろ!?」

「・・・死んだ?・・・3年前に死んだ?」

一瞬、3年前の彗星を眺める光景が頭をよぎります。

「まさか・・・だってほら、あいつの書いたメモだってちゃんと」

瀧はスマホのメモを開きます。

しかし、三葉が記したメモは急に文字化けを起こしながら次々に消えていき、ついに他の日付の記録も全てが消えていってしまいます。
目をこすりながら呆然と見つめる瀧。

な・・・!?
・・・消えてく・・・

その後、図書館を訪れた瀧らはは3年前に地球に最接近したティアマト彗星の核が2つに分かれてその片割れが糸守町を直撃、町は蒸発し、町のほどんどの住民が死亡した事実を改めて知ります。

「1200年周期で太陽を回るティアマト彗星が地球に最接近したのは3年前の10月。近時点でその核が砕けるのを誰も予想できなかった。割れた彗星の一部が隕石となって日本に落下」と司

「その日はちょうど秋祭りの日だったみたい」ミキ

”糸守 彗星 被害”とパソコンで検索する。
次々と出てくる記事・・・

「落下地点はここ。8時40分。祭りで人が集まっている場所にちょうど落ちた。町の三分の一、500人以上が亡くなって、今はもう糸守には誰も住んでいないそうだ」司

その日は宮水神社の祭りの日でそこに隕石が直撃した。

『糸守町彗星災害犠牲者名簿目録』をミキが持ち出し、その中を狂ったようにめくる瀧

勅使河原克彦(17)と名取早耶香(17)・・・

「勅使河原と早耶香・・・!」

はああっ!

そして、遂に決定的な名前を見つけます。

宮水一葉(82)宮水三葉(17)!!宮水四葉(9)

「ねぇ、この子なの?何かの間違いだよ!だってこの人3年前に亡くなってるのよ」

ミキの言葉にも未だ実感が湧かない瀧。

「つい2、3週間か前に・・・彗星が見えるねって、こいつは俺に言ったんです・・・。だから・・・」

(あんた今

「俺は・・・」

(夢を見とるな?)

「俺は、何を・・・」

瀧は3年前の三葉と入れ替わりしていた。
時間軸がズレていた・・・

瀧がミキとデートした日に三葉に電話しても繋がらなかったこと、デートの前日に三葉が「明日のデートが終わるころには彗星が大きく見えるね」と記したことから、瀧がミキとデートしたのは彗星が糸守に落ちた日、祭りの当日だったことがわかるのです。

電話が繋がらないのは、時間軸が異なるからと言うのと、彗星が落ちた後だからという2つの理由が成り立ちます。

だから、三葉は瀧の体で入れ替われなかった

旅館のロビーでタバコを吸うミキ。
「賑やかだね」

「一部屋しか取れなくて、すみません」司

「ううん・・・全然。瀧くんは?」

「まだ部屋で糸守の記事ばかりを読んでます。当時の新聞とか雑誌とか手当たり次第って感じで」

「・・・何?」

「あ、いえ。吸うんですね」

「やめてたんだけどね・・・」

「どう思います?あいつの話」

「好きだったんだ。ここ最近の瀧くん。」

「え?」

「前からいい子だったけど、最近は特に。なんか必死で、かわいくって・・・」

タバコの煙を吐きだしながら・・・

「瀧くんが言ってることはやっぱりおかしいと思うけど・・・でも、きっと瀧くんは誰かに出会って、その子が瀧くんを変えたんだよ。それだけは確かなんじゃないかな」

瀧は受け入れられない事実を目の前にして、まだ悩んでいました。

全部ただの夢で・・・景色に見覚えがあったのは3年前のニュースを無意識に覚えていたから。そうじゃなければ・・・幽霊?いや・・・全部、俺の・・・妄想?

はっ!

顔をあげる。

「あいつの名前、なんだっけ・・・?」

ノックがして浴衣姿のミキが入って来た。

「司くん、お風呂入ってくるって」

「あ、先輩。あの・・・俺、なんかおかしなことばっか言ってて・・・。今日一日すみません」

「ううん」

瀧は図書館から借りてきた膨大な資料を読み漁ります。

「消えた糸守町・全記録」
「ティアマト彗星の悲劇」

それでもまだ瀧の心はざわついている。

糸守の資料を見ながらミキがとあるページで呟きます。

「組紐だね。きれい・・・瀧くんのそれも、もしかしたら組紐?」

瀧が左腕にいつも巻いている赤とオレンジが彩る紐を見てミキに答えます。

「え?ああ、これは、たしか・・・ずっと前に人からもらって・・・なんとなくお守り代わりに時々つけてて

誰から?・・・」

「お風呂、瀧くんも入ってきたら?」

「はい・・・いえ・・・俺、組紐を作る人に聞いたことがあるんです。
紐は時間の流れそのものだって。
ねじれたり絡まったり、戻ったり繋がったり。それが時間なんだって。それがムスビ・・・」

不意に、ある風景が頭の中に浮かびます。

「あの場所なら・・・」

広げた糸守町の地図

三葉の身体に瀧が入っていた日、糸守湖から北に離れた山奥にある「宮水神社のご神体」がある場所、口噛み酒を納めた場所なら・・・

そう、ここで瀧が思い至るに至った理由は、あの日三葉と入れ替わった自分がご神体に口噛み酒を奉納した時の経験が生きてきます。
つまり、あの日入れ替わったのは必然だったのです。

ご神体がある場所も大きなカルデラです。

このことから、糸守は1200年ごとに彗星が落ちる不可思議な場所だということがわかります。

ご神体のある場所が最初に隕石が落ちた場所

糸守湖が1200年前に隕石が落ちてできた・・・

そして・・・

机に伏して寝てしまっていた瀧

瀧くん・・・瀧くん
・・・瀧くん

覚えて、ない?

「はっ!」目覚める瀧。

そして、右手を見る。

そして、朝。
司とミキが目覚める前に瀧は宿を出ていた。

奥寺先輩・司へ
どうしても行ってみたい場所があります。
先に東京に帰っていてください。勝手ですみません。
必ず後から帰ります。ありがとう

「瀧くん・・・」

瀧はメモを残し、ご神体のある山へと向かいます。

あのラーメン屋の店主に途中まで送ってもらい、「上で食いな」と弁当までもらいます。

「あんたの描いた糸守。あら良かった」

そして、天候が崩れ一気に雨が降りしきる中を瀧は進み、途中の洞窟でおにぎりを食べながら頂上へのルートを辿ります。

「より集まって、形を作って、捻じれて絡まって、時には戻って、また繋がって。それがムスビ、それが時間」

そして・・・
遂にその場所に立ったのです。
カルデラを見下ろす窪地の頂上に

「あった・・・本当にあった・・・夢じゃ、なかった」

思わず涙を拭います。

大きくえぐれたカルデアの中心に、ご神体の巨木と大岩があります。

カルデアを下り切ったところと、ご神体のある場所の間には、かつてせせらぎほどの流れがあった。
しかし雨で増水したのか、今では胸にまで達するほどの嵩になっていた。
水流を渡る。

ここから先は、あの世。

そして、ご神体木がある側に横たわる巨大岩に入り込みます。

小さな祠があり、階段を下りると、小さな社がある。
そこには2つのとっくりが。
口噛み酒です。

「俺たちが運んできた酒だ。こっちが妹で、こっちが俺・・・」

スマホで照らして見ます。

とっくりの表面は苔で覆われて・・・

「彗星が落ちる前、3年前のあいつと、俺は入れ替わってたってことか?

時間が・・・ずれてた?」

「あいつの半分・・・」

向かって左側、三葉の口噛み酒を開け、蓋に注ぐ。

「ムスビ。本当に時間が戻るのなら、もう一度だけ・・・」

一気に飲み干します。

しかし何も起こらず、立ち上がろうとした瀧は、滑って倒れ込みそうになります。
見上げた祠の天井に彗星を見ます。

「はっ!彗星!」

2つに割れた彗星の壁画・・・

それが動き出して自分に向かって落ちてくる彗星-

彗星の片割れが水の中に入り込むと瀧もまた水の中に・・・
彗星の片割れががいつしか赤い組紐となり、どんどん奥まで引き込んでいく・・・
瀧はその赤い組紐に繋がれて・・・

そして、次々と三葉の記憶が流れ込みます・・・

細胞が分裂し・・・

「あなたの名前は、三葉」

母の顔と声。へその緒が切られる。

「あなた、お姉ちゃんになったんやよ」

「2人は父さんの宝物だ」

「ごめんね、みんな・・・」

妹ができ、母が病で亡くなり、

「お父さん、お母さんいつ帰ってくるの?」無邪気な四葉

「救えなかった・・・」嘆く父。

「あんたがそんなんでどうする?」

「神社など続けたところで」

「婿養子が何を言う!」

「僕が愛したのは二葉です。宮水神社じゃない!」

「出て行け!」

まだ幼い三葉はそれを部屋の外で聞いて耳を塞ぎしゃがみこむ。

祖母と父の言い合い、そして父は三葉たちを残して出て行きます。

「三葉、四葉、今日からずっと、ばあちゃんと一緒やで」

そして、入れ替わりの日々。

「お前は誰だって」って、あなたこそ誰よ!

うぬぼれんといてよね、彼女もおらんくせに

いいなぁ・・・今頃2人は一緒かぁ

はっ・・・わたし・・・

頬を伝う涙・・・

「ちょっと、東京に行ってくる」

「え?ちょっとお姉ちゃん!」

その夜

「おばあちゃん、お願いがあるんやけど」

髪を切ってもらう三葉

「そっか・・・彗星、今日が一番明るく見えるんやっけ」

三葉、そこにいちゃダメだ!
三葉!!彗星が落ちる前に、町から逃げるんだ!
三葉、逃げろ!
三葉!三葉!!三葉ぁ!!!!

ガシャーンと金属音
そして、暗転-

はっ!

瀧は目を覚まします。

三葉の身体になって。

「三葉だ・・・生きてる」

涙が溢れ、自分の体を抱きしめます。

そして、四葉が襖を開けます。

「お姉ちゃん、またおっぱい・・・げっ!」

「はぁあああ・・・妹だ・・・う、うっ・・・四葉あぁぁぁ」

涙でぐしゃぐしゃになり胸を揉む(笑)

「ひっ!ひぃいいいい」

四葉は気味悪がってピシャっと襖を閉めます。

「おばあちゃん、お姉ちゃんいよいよヤバいわ。
わたし今日は先に一人で行くでね。
やバい・・・やバい・・・やばいよぉ・・・やばい・・・やばい」

そう、その日は彗星が落ちる当日の朝でした。

四葉は祖母に言って先に学校へ行ってしまいます。

『1週間ほど前から肉眼でも見え始めたティアマト彗星。いよいよ今夜・・・』

「今夜!まだ間に合う!」

テレビの前で仁王立ちになる瀧。

そこで三葉を見た一葉は言います。

「おはよ。おや、あんた、三葉やないな」

「おばあちゃん、知ってたの・・・」

「ここんとこのお前を見とったら思い出したわ。わしも少女の頃不思議な夢を見とった覚えがある」

「はっ!」

「夢で誰になっとったんか、今ではもう、記憶は消えてまったが」

「消える・・・」

「大事にしいや。夢は目覚めればいつか消える。わしにも、あんたの母ちゃんにもそんな時期があったんやで」

はっ!

糸守湖は隕石湖であること、またご神体ものある場所も隕石によるカルデラであること・・・

瀧は思い当たります

宮水の人たちはそうした1200年ごとに訪れる災害、隕石落下の危機を回避するために入れ替わりをしているのではないか

宮水家に代々受け継がれてきた能力・・・

「もしかしたら、宮水の人たちの夢は、ぜんぶ今日のためにあったのかもしれない!」

「おばあちゃん、聞いて。今夜糸守町に隕石が落ちて、みんな死ぬ」

そんなこと誰も信じないって、意外に普通のことを言うばあちゃんだな。

瀧は、みんなを生き残らせるために動き出します。

「絶対に死なせるもんか!」

瀧は走ります。

学校へ着いた瀧を見ててっしーと早耶香が驚きます。

「ちょっと・・・どうしたの!?三葉!」

「お前・・・かっ・・・髪が」

「あぁ、これ?前の方がよかったよね」

「軽いな・・・」

「そんなことより!このままだと今夜、みんな死ぬ!」

「「「「え?」」」」
クラスのざわつきが止んで一斉に瀧の方を見る。

「だから、私たちで!」

早耶香はコンビニで菓子やらパンやらを買い出ししていた。

「早耶香ちゃん、学校は?」

コンビニのおかみさんが問う。

「はぁ、ちょっと町を救わないかんくて・・・」

説明にしどろもどろの早耶香

「はぁ?」

顔見知りのおかみさんが怪訝な顔をする

瀧とてっしーは、使われていない部室の中でパソコンを見つめていた。

「防災無線や!」

「防災無線?」

「街中にスピーカーあるやろ?それを使うんや」

重畳 周波数

てっしーが検索をかける

「そうか・・・使える!すごいじゃん、てっしー」

瀧がてっしーの肩に手を回す。

「お、お前、あんまりくっつくなや!」

「なに~?照れてんの?ほら、ほら!」

瀧はさらに体を寄せ、腕を押し付ける。

「ちょ、三葉、やめろって!・・・やめろって言ってるやろ!嫁入り前の娘が!」

「あはは、てっしー、あんたっていい奴だな」

そして、早耶香が買い出しから戻って来た。
手には沢山の袋に入った菓子類、片足で扉を開ける。

「買ってきたよー。はい、おつり」

「ごめんね、さやちん」

「まぁいいんやけどさ」

「しょっぱい山やな」

「うっさいなー」

「で、そっちはどうなん?避難計画とやらはできたん?」

瀧とてっしーとがおんなじ顔で、「「うっひっひっ・・・」」と笑う。

「ば、ば、爆弾!?」

早耶香がケーキを食べながら声を上げる

「含水爆弾言うてな、親父の会社の保管庫にあるやつを使うんや」

「で、電波ジャック!?」

またしても早耶香が声を上げる

「こんな田舎の防災無線は、伝送周波数と起動用の重畳周波数さえわかりゃ簡単に乗っ取れるでな。だから、学校の放送室からでも町中に避難指示を流せる」

瀧がトントンと糸守町の地図を指さす。

「これが隕石の予想範囲。ここは、ほら被害の外側にある。だから、町民の避難場所もここの校庭にすればいい」

「か、完璧犯罪やに・・・」

早耶香が震えながら言う。

「で、放送はさやちん担当ね」

「なんでよ!」

「お前放送部やろ。俺が爆薬担当」

「私は町長に会いに行く」

「最後は役場に出てもらわんと町民全てはさすがに動かせん」

「娘の私から話せば、きっと説得できる」

「はぁ・・・なんでもいいんやけど、どうせもしもの妄想やろ?」

「え?いやぁ・・・」

瀧も言葉に詰まる

「そうとも限らんぞ!
糸守湖がどうやって出来たか知っとるか?」

てっしーがパソコンの画面を見せる。

糸守湖の由来
千二百年前の隕石湖

「隕石湖や!1000年前、少なくとも一度はこの場所に隕石が落ちたんや!」

その時、祠の壁画を思い出す瀧

「そうだ!そうだよ!てっしー!」

てっしーとガンガンガンと肘や拳を合わせ

「「やろうぜ!オレたちで!」」

てっしーと瀧の声が合わさる。

早耶香が顔をしかめる。

一方、役場の町長室で瀧は三葉の父親と会っていた。

「何を言ってるんだ!お前は?」

「だから、夜までに町全体を避難させないと、みんなが!」

「少し黙れ!」

「はっ!」

町長の強い口調にショックを受ける。

中身が男の自分なら説得できるとどこかで自信を持っていたものが崩れ落ちていく・・・

「・・・彗星が2つに割れて町に落ちる?五百人以上が死ぬだと?
よくもそんな戯言を俺の前で
本気で言ってるなら、お前は病気だ
・・・妄言は宮水の血筋か・・・」

言葉が出ない。
顔がゆがむ

「車を出してやるから」

どこかにダイヤルしながら町長が言う。

「市内の病院で医者に診てもらえ。その後ならもう一度話を聞いてやる」

「ば・・・」

瀧は怒りの頂点に達する。
ツカツカと町長の前まで歩み寄ると

「バカにしやがって!!」

バンっと机をたたき、町長を睨みつけネクタイをグイッとねじって引き寄せた。

町長の目が見開かれ、受話器が外れる。

「はっ」

瀧は思わず手を緩めた。

「三葉・・・いや、お前は誰だ?」

湖を見下ろす道を力なく歩く瀧。

子供たちの声が聞こえる

「じゃあ、あとでお祭りでな」

「神社の下で待ち合わせな」

「バイバーイ!あとでな」

「はっ・・・行っちゃダメだ!!町から逃げて!友達にも伝えて!!」

瀧は子供の手を掴んでいた。

「な、なんや、あんた」

手を払いのけられる

「お姉ちゃーん!」四葉の声。

「なんなんやさ・・・行こ」

「ちょっと、何しとんの!」
四葉が見かけて走り寄る。

「三葉なら・・・三葉なら説得できたのか?俺じゃダメなのか!?」

「え?」

「四葉、夕方までにおばあちゃんと一緒に町から出て!ここにいちゃ死んじゃうんだよ!!」

四葉の肩を掴みながら瀧は叫びます。

「ちょっと、何言っとんの?昨日は急に東京へ行ってまうし、なんかお姉ちゃん変やよ!」

「え・・・東京?」

「おーい、三葉ー」

てっしーの乗る自転車の後ろから早耶香が声をかける

「親父さんとの話どうやった?おい、三葉?」

しかし、瀧は答えることができない。
瀧は何か考え込むようにして顎に手をやり黙っていると

「お姉ちゃんどうしたん?」てっしー

「さぁ・・・」四葉

ハッ!

不意に何かの気配を感じ取り、瀧は山の上を見やる。

「そこに・・・いるのか?」

「あっち、なんかあるの?」早耶香

「てっしー、自転車貸して!」

瀧は強引に自転車に乗るとペダルを踏みこむ。

「え?ちょっと、おい、三葉!」

「作戦は!?」

「計画準備、しといてくれ!」

そして山へ向かい全力でペダルを漕ぐ。

祠の中で気を失っていた瀧の頬に水滴が落ちる。

上半身を起こし、気づく

「わ、わたし、瀧くんになっとる・・・」

「どうして瀧くんがここに?」

そうして、カルデアを上りきって頂上に立つ。

目の前に糸守湖がある。

だが・・・

「あああ!町が・・・ない・・・!」

見慣れた町が、ない。

破壊された町の残骸
重なるもう一つの大きな湖

その場に膝をつく。
体が震える。

「・・・わたし、あの時・・・死んだの・・・?」

必死に山の頂上を目指す瀧

瀧くん・・・瀧くん・・・瀧くん・・・覚えて、ない?

三葉は制服姿のまま、電車に乗っていた。

「わたし、ちょっと東京に行ってくる」

「ええ?今から?なんで??」

「ああ・・・デート」

「え?お姉ちゃん東京に彼氏おったの?」

「わたしのデートやなくて・・・うーん・・・夜には帰るで。心配せんといて」

電車に乗り込む。

急に訪ねたら迷惑かな。
驚くかな。
瀧くんは、嫌がるかな。

東京駅へ滑り込む新幹線。

三葉はスマホで電話をかける

「おかけになった電話は電波の届かない・・・」

繋がらない・・・
電話を切る

ここでも時間のズレが生じています。
三葉の電話が瀧に通じるはずはありません。
絶対に。

会えっこない

でも、もし会えたら・・・どうしよう

やっぱり迷惑かな
気まずいかな
それとも、もしかしたら・・・少し、喜ぶかな・・・

街中でまた電話をかける
同じくつながらない

会えっこ・・・ない・・・

でも、確かなことがひとつだけある。
私たちは会えば絶対、すぐにわかる

私に入っていたのは君なんだって
君に入っていたのは私なんだって

見知らぬ東京で必死に三葉は瀧を探す
しかし、見つかるはずもなく

歩き続けて痛む足からローファーを脱ぎ、足を擦る。

そして、駅のベンチに座り込む。
夕陽が見える。
ボーっとそれを見ている。

電車が入り込んで来る。
ぼんやりと電車の窓を眺める。

はっ!

息を飲み、弾かれるように立ち上がる。

そして、追いかけるようにして電車に乗り込む。

人混みをかき分けるように奥へ入り、そして・・・

そして、瀧の前に立ちます。
単語帳をめくっている瀧は三葉に気づきません。
かすかに頬を赤らめる三葉
髪を触り・・・

自転車が何かに捕らわれて滑る。
自転車が斜面を落下し、地面にぶつかる。

瀧は反射的にそばの幹を掴み、難を逃れると木に登り山道へ戻って走り出す。

三葉。
三年前のあの時、まだお前を知る前・・・

瀧くん・・・瀧くん

「瀧くん」

「え?」

「あの、わたし・・・覚えて、ない?」

「誰?お前」

「あ・・・すみません」

瀧くんなのに・・・
変な女・・・

ガタンと電車が揺れ、三葉は瀧とぶつかります。

”次は四ツ谷、四ツ谷”

ドアが開き、乗客たちが下りて、いたたまれず三葉もついて降りていく。

その時、瀧が声をかけます。

「あのさ、あんたの名前・・・」

「みつは!」

三葉が髪紐をほどいて瀧に投げる

弧を描いて瀧に届き、瀧が掴む。

「名前は、三葉!」

そう、ここで決定的な時間のズレが判明します。

高校3年の三葉が東京に向かった時、瀧はまだ中学生でした。

会えばわかる・・・

でも、三葉と知り合う前の時間軸を生きていた瀧には三葉のことがわかるはずはありません・・・

とても切ないシーンです。。。

3年前、お前はあの時、俺に会いに来たんだ!

そこに思い至る瀧

そして、頂上を目指して走る。転びそうになりながらただ、走る。

そして、ようやく頂上へ着いた。
日が暮れようとしていた。

「三葉ぁーーーー!」

はっ・・・

瀧くんの声が聞こえる!

辺りを見回す。

「瀧くーーーん!」

ハッ!

聞こえた!

「三葉ぁー!いるんだろ?俺の体の中に!」

瀧くんだ!

「瀧くん!瀧くん!どこ!?」

「三葉だ!声は聞こえるのに・・・」

「瀧くん!ねぇ、どこにいるの!?瀧くーん!!」

そして、頂上の縁に沿って走り出す。

三葉も走る。

「「はっ・・・!」」

瀧が立ち止まり振り返る

三葉も立ち止まり、振り返る

すれ違った!!

「瀧くん?そこに・・・」

「いるのか?」

三葉は手を伸ばす

瀧は手を伸ばす

でも、指先は触れ合うことなく宙を掴む

周囲を見渡す。

誰もいない・・・

ダメなのか

風が吹き、三葉の髪が揺れ、太陽が雲の下に沈んでいく

世界の輪郭がぼやける

「「かたわれ時だ」」

声が重なった。

正面に、三葉がいた。

ぽかんとしたような顔で俺を見つめている。

「三葉」

俺は笑顔で呼びかける。

三葉の顔がみるみる笑顔から涙でくしゃくしゃになる。

「瀧くん?瀧くん」

三葉の両手が俺の両腕に触れる。

「瀧くんがいる。瀧くん・・・」

三葉の顔から大粒の涙がぽたぽたとこぼれ落ちる。

ようやく会えた。

俺が俺のままで、三葉が三葉のままで。

三年の時を超えて本当に会えた。

ひたすら泣きじゃくる三葉に俺は言う。

「お前に、会いに来たんだ」

「ホント、大変だったよ。お前すげー遠くにいるからさ」

三葉が俺を見る

「え・・・でも、どうやって?わたし、あの時・・・」

「三葉の口噛み酒を飲んだんだ」

「え・・・」

「あ・・・あ・・・」

三葉が口を押えて後ずさる

「あ・・・あれを飲んだぁ?」

「え?」

「ばか!へんたい!」

「え?ええ!?」

三葉は顔を真っ赤にして怒っている

「そうだ!それにあんた、わたしの胸さわったやろ!?」

「ど、ど、ど、どうしてそれを・・・」

「四葉が見とったんやからね!」

「あああ、ごめん!それ、つい・・・」

「一回だけだって!」

「一回だけぇ?うーん・・・何回でも同じや!あほ!」

「あ、すまん!」

両手を合わせて頭を下げる。

「あ、これ・・・」

三葉は俺の右手首を見て言う。

「ああ・・・」

組紐をほどき、巻き取りながら三葉に言う。

「お前さぁ、知り合う前に会いに来るなよ・・・分かるわけねえだろ」

「ほら」

外した組紐を三葉に手渡す。

「三年、俺が持ってた。今度は三葉が持ってて」

「うん!」

三葉が嬉しそうな笑顔になる。

三葉は短い髪にくるりと組紐を斜めに巻くと左耳の上で結ぶ。

「どうかな?」

「あー・・・まぁ、悪くないな」

「思ってないでしょ!?」

「ええ!・・・はは・・・すまん」

「もう・・・この男は!」

三葉がぷいと横を向く

と、スグにぷっと三葉が吹き出し、お腹を抱えてくすくすと笑いだす。

俺も笑えてきた。

二人して笑いあう。

少しずつ暗くなっていく

「なあ、三葉」

「まだ、やることがある。聞いて」

「来た・・・!」

三葉が空を見上げて震えた声で言う。

尾を引く彗星

「大丈夫。きっとまだ間に合う」

「うん・・・」

「かたわれ時がもう・・・」

「終わる」

「なあ、三葉。目が覚めてもお互い忘れないようにさ」

サインペンを取り出し、三葉の右手を掴んで手のひらに文字を書く。

「名前書いておこうぜ。ほら」

そう言って三葉にペンを渡す

「うん!」

三葉が笑顔になり俺の右手を持ってペン先をつける。

かたん

足元にペンが落ちる。

三葉の姿が消えた。

かたわれ時が終わったのだ。

「え?」

「三葉?おい、三葉?」

声を上げる。

返事はない。

手のひらには書きかけの線が一本だけ引かれている。

「ホントは・・・言おうと思ったんだ。

お前が世界のどこにいても、必ず会いに行くって」

空を見上げる

「君の名前は、三葉」

「大丈夫。覚えてる!」

「三葉、三葉・・・三葉、三葉。名前はみつは!」

「君の名前は・・・!」

不意に、言葉が途切れた。
目が見開かれる。

慌ててペンを拾い、手のひらに書こうとした。

でも、線を引いただけで手が止まる。

力を込めて手のひらに突き刺すようにして名前を書こうとする。

でも、ペンはその名前を書くことができない。
指先が震える。

「お前は、誰だ?」

ペンが落ちる。

RADWIMPSの「スパークル」のイントロのピアノが流れます。

「俺はどうしてここに来た?」

「あいつに・・・あいつに会うために来た!助けるために来た!生きていてほしかった!」

「誰だ?誰だ、誰だ、誰に会いに来た?」

「大事な人!忘れたくない人!忘れちゃダメな人!」

涙が流れる。

「誰だ、誰だ、誰だ・・・!?

名前は!!!」

三葉は走っていた。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・瀧くん、瀧くん、瀧くん!大丈夫、覚えてる!絶対忘れない!瀧くん、瀧くん・・・!君の名前は、瀧くん!!」

変電所に辿りつく三葉。
そこにてっしーがスクーターで到着します。

「あ、てっしー!」

「三葉!今までどこに!」

「自転車壊しちゃって、ごめんやって」

「はぁ?誰が?」

「わたしが・・・」

「うーん、後で全部説明してもらうでな!」

「落ちるんか!?あれが!」

「落ちる!この目で見たの!」

「見たってか!?じゃあ、やるしかねえな!」

変電所の鍵を壊します。

「これで仲良く犯罪者や!」

スクーターで帰り道、後ろに乗った三葉が自分のスマホをてっしーの耳元に当てます。

「ええっ?私、本当にやるん??」早耶香

「町が停電したらすぐに非常用電源に切り替わるはずやから!したら放送機器も使えるで!」

「さやちん、お願い!出来るだけ放送を繰り返して!」

「やったれや!」

「あぁ、もう!ヤケやーー!」

「そろそろかなぁ?」

「そんなもん適当や!」

と、背後で変電所が爆発、火の手が上がる

「「あああ!はぁあああ!!」

山の上でなお爆発を繰り返す。

「今の何?」

「なぁ、あそこ!」

山の上に火の手を見た人たちが叫びます。

と、祭りで賑わう神社の電気が落ちる。
役場の電気も落ちる。
糸守湖を中心に次々に明かりが消えてゆく。

「なぁ、見て!」

「わぁあああ!!」

彗星を見て叫ぶ子供たち。

ウウウウウウゥゥゥ

サイレンが鳴り響く

「こちらは糸守町役場です。変電所で爆発事故が発生しました。さらなる爆発と、山火事の危険性があります。次の地区は今すぐ糸守高校まで避難してください。門入り地区、坂上地区・・・」

「ここからの放送じゃないだと?誰がしゃべってるんだ!」町長が叫ぶ

「いくぞ三葉!」

「あっ、てっしー!」

神社に着いた2人はスクーターを乗り捨て、ヘルメットを脱いで、町民たちに声をかけます。

「みんな逃げろ!山火事になっとる!!」

「山火事です!逃げてください!!」

「逃げろ!火事だ!逃げろ!」

「皆さん、危険です!逃げてください!!」

「これはとても間に合わん!三葉!」

「はっ・・・!」

涙ぐむ三葉。

「え?どうした?」

「あの人の・・・あの人の名前が思い出せんの・・・!」

「知るかあほ!これはお前が始めたことや!消防出してもらわんと、とても避難させきれん!行ってオヤジさんを説得してこい!!」

「・・・うん」

「みんな逃げろ!高校まで行くんや!」

「こんな田舎でテロなんてあるか!」

「今、調査中やと!」

「今のところ山火事はないんだな?確かか?よし、この放送を早く止めろ!発信源はまだわからんのか?」

「町長、今、鷹山の制作部から・・・」

「高校だと!?」

「繰り返します。次の地域の方は・・・きゃあ!」

「お前なにしとるんや!」

「ああ!さやちん・・・!!」

「やっべえ・・・」てっしー

「うっ・・・うっ・・・うっ・・・」泣くだけの早耶香

「なんてことしてくれたんや!名取」

「こちらは糸乘町役場です。ただいま事故状況を確認しています。町民の皆さまは慌てず、その場で待機して支持をお待ちください」

「家にいろって」

「どうなっとるんや。結局待機か」
消防隊もどうしていいかわからず。

「もう、ちょっと!みんな逃げた方がええんやって!高校が避難所になっとるで!」

「克彦!お前、なにやっとるんや!」勅使河原父に見つかってしまう。

「すまんつぁ・・・ここまでや・・・」首をうなだれるてっしー

そして、彗星が割れます。
割れた片方が地上に向かって・・・

早耶香が町役場の職員に彗星を見ながら伝えている

「あぁ!まじで・・・割れとる!」てっしーが叫ぶ

父親にそれを見せて体を揺さぶるてっしー
てっしーの父はがくがくと体を揺さぶられ、呆然とそれを見上げます。

『ご覧ください!彗星が二つに割れ、無数の流星が発生しています!これは事前の予報にはありませんでしたね!』興奮気味に話すアナウンサー

「うわぁ・・・俺、ちょっと見てくる!」

3年前の瀧はその幻想的な眺めに心を奪われます。

『これほどの壮麗な天体現象を目撃していることを・・・
まさに肉眼で目撃できていることはこの時代に生きる私達にとっての大変な幸運というべきでしょう。』

三葉は走る。

ねぇ、あなたは誰?

誰、誰?あの人は誰?
大事な人!
忘れちゃダメな人!
忘れたくなかった人!
誰、誰?君は誰!?
君の、名前は・・・!!

「はぁ・・・はぁ・・・!あっ!!ああっ!割れてる・・・!!ああっ・・・!!!」

走る途中で道の段差に躓いて倒れ込み、そのままごろごろと転がり、体がバウンドして打ち付けられる。

再びRADWIMPSの「スパークル」が流れます。

愛し方さえも、君の匂いがした
歩き方さえも笑い声がした

痛みで気が遠くなりそうな中で思い出したのは・・・

(目が覚めても忘れないようにさ、名前書いとこうぜ)

倒れたまま右手を拡げて見ると、そこには・・・

すきだ

「はっ!・・・」

「これじゃあ・・・名前、わかんないよ・・・」

必死に起き上がりながら、右手を左手て握りしめるように、泣く三葉。

泣いてる場合じゃない!

そして、意を決して再び走り始める。

「お父さん!!」

肩で息をしながらもたれるように役場に到着した三葉
そこには一葉と四葉の姿も

「三葉!」父

「お姉ちゃん!」

「お前、また・・・」父が冷たく言い放とうとする。

そこには、傷だらけ、泥だらけになりながらも真剣な眼差しの三葉がいた。

「はっ・・・!」
目を見張る父

真っ直ぐに父を見る。
そして、歩み寄る!

中学生の瀧は夜空を見て感動します。

それはまるで夢の景色のように、ただひたすらに美しい眺めだった。

暗転-

割れた彗星の片割れが隕石となって神社を直撃!

大爆発が起こり、橋が、家が、車が吹き飛び、森がざわめく

湖が燃え、糸守湖の上に大きな窪みができる。

俺、こんな場所でなにやってんだ?

ふと我に返った俺は見知らぬ場所にいた。
ここはどこなんだ?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

いつの間にか癖になっていた。
無意識に髪の後ろを触ること
右手のひらを見つめること・・・

電車の窓から外を見る。

”次は代々木、代々木”

不意に、ハッとなる。

ホームに赤い髪紐の女性が映った。

俺は、電車を降りて走り出す。
しかし、さっき見た人はもういない。

そして、また俺は手のひらを見ていた。

ずっと何かを、誰かを探している。
いつからか、そんな気持ちに憑りつかれている。

就活中だった。

「御社を志望しました理由は-」

「人が生活している風景には・・・」

「東京だっていつ消えてしまうかわからないと思うんです」

「だから、記憶の中であっても、なんていうか・・・人をあたため続けてくれるような風景を・・・」

「はぁ・・・」

「面接、今日で何社目だ?」

「数えてねぇよ」

「受かる気がしないな」

「お前が言うな!」

「スーツが似合わなすぎだからじゃね?」高木

「お前だって似たようなもんだろ」

「俺、内定2社」高木がニッと笑う

「俺、8社」司は当然と言う顔で言い放つ

「うぅ・・・」

探しているのが、誰か、なのかどこか、なのか、それともただ単に就職先なのか、自分でもよくわからない。

はぁ・・・

ふと、LINEの着信があった。
俺はコーヒーを飲み干して、立ち上がった。

「お、就活中だね~」奥寺ミキが言う

「だいぶ手こずってますが・・・」

「うーん、スーツが似合ってないからじゃないの?」

「ええっ?そんなに似合ってないすか?」

「うふふふふふ・・・」

「今日はどうしたんすか?」

「仕事でこっちまで来たから、ちょっと瀧くんの顔でも見ておこうと思って」

ビルの大ビジョンに

『彗星被害から8年』

大きな文字が流れる

「私たち、いつか糸守まで行ったことあったよね。あれって瀧くんがまだ高校生だったから・・・」

「5年前」

「そんなに・・・なんだか色々忘れちゃったなぁ」

あの頃ののことは俺ももうあまりよく覚えていい。

けんかでもしたのか、司と先輩とは別々に東京に戻ったこと、どこかの山で一人で夜を明かしたこと。

記憶はその程度だ。
ただ、あの彗星を巡って起きた出来事に、一時期俺は妙に心を惹かれていた。

彗星の片割れが1つの町を破壊した、大災害。

しかし、町の住人のほとんどが奇跡的に無事だった。
その日、偶然にも町を挙げての避難訓練があり、ほとんどの町民が被害範囲の外にいたというのだ。

あまりの偶然と幸運に、様々な噂が囁かれた。
そういう記事を随分熱心に、あの頃俺は読んでいた。

一体何がそれほど気になっていたのか。自分でももう理由はよくわからない。
あの町に、知り合いがいたわけでもないのに。

明らかに、時間軸が書き換わっています。
もう1つの不文律-
歴史は変わらない。
でも、変わってしまった歴史はそ後の全てが自動的に修正される、というものです。

もう日は暮れていた。

「今日はありがとう。ここまででいいよ」

「君もいつかちゃんと、幸せになりなさい」

手を振る先輩の薬指にリングが光っていた。

また、ふと右の手のひらを見る。

ずっと何かを、誰かを、探しているような気がする。

-季節は移り替り

冬になってもまだ俺は就活をしていた、雨宿りに立ち寄った珈琲店で紙コップのコーヒーを飲み干し、手帳に目を落とす。
×印が増えていくだけの手帳。

ふいに声が聞こえた

「やっぱりもう一回ブライダルフェアに行っときたいなあ」

「どこも似たようなもんやろ」

「神前式もいいかなって」

「お前、チャペルが夢だって言っとったに」

「それより、てっしーさぁ、式までにヒゲ剃ってよね」

手が止まる

「私も3キロ痩せるでさ」

「ケーキ食いながら言うか?」

「明日から本気出すの」

思わず振り返る。

2人はすでに席から立ちあがってそのまま店を出て行った。
その後ろ姿からなぜか目を離せずにいた

雨は雪に変わっていた。
雪が舞う町で、俺は歩道橋を歩いていた。
傘は持っていなかった。

その時、女性とすれ違った。

目の端に赤い髪紐が一瞬映りハッとする。
だが、そのまま歩き出す。

女性も何かを感じ、傘越しにふと後ろを振り返る。

背を向けて歩く男性

彼女もまた、一瞬立ち止まっただけで歩き出す。

なんでもないやのイントロが流れる。

区立図書館に入った。

「消えた糸守町・全記録」

と書かれた写真集。

大きな湖
神社の階段
鳥居
踏切
高校の校舎

見覚えがある気がした。

今はもうない町の風景に、なぜこれほど心を締め付けられるのだろう。

そして春、俺は就職した。
朝、目が覚めると右手をじっと見る癖はまだ治っていない。

私はいつものように鏡に向かい髪紐を結う。
アパートを出て、自動改札をくぐって通勤電車に乗る。
電車のドアに寄りかかり、外を見ていた。

はっ!!

並走する電車に乗っている男性を見てはっとなる。

はっ!

電車のドアに寄りかかり、外を見ていた俺は、並走する女性と目が合った瞬間、
心臓を掴まれたようにドキッとする。

俺は思わず電車を降りて街中を走る。
彼女を探して

私は千駄ヶ谷駅を降りると彼を探して走っていた。

「はっ・・・」

「はっ・・・」

ずっと誰かを・・・

誰かを探していた!

「はっ・・・」

路地を曲がり、階段に行きついた。

見下ろすと、下に彼がいた

「はっ・・・」

見上げた階段の上に彼女がいた。

俺はゆっくりと階段を上っていく。
でも、その姿を直視できずに下を向いて。

彼女も階段を下りていく。

彼は何も言わず、私も何も言えない。
目を伏せたまますれ違う。
その瞬間、苦しい気持ちになる。
胸が締め付けられそうに・・・

くっ・・・

なぜ言えない・・・

階段を上りきる寸前、俺は振り返り、ようやく声をかけた。

「あ、あの・・・!」

「はっ!」

「俺、君をどこかで・・・」

彼女も振り返り涙顔で

「はっ・・・ははっ・・・わたしも・・・」

そうしてにっこりと微笑む顔は、あのかたわれ時に見た笑顔にそっくりで・・

声が重なる

「「君の名前は」」

 

 

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